ことなかれ

あたりさわりのない日々の記録

アリとキリギリス考

「アリとキリギリス」ってあるじゃないですか。

童話の。

夏の間せっせと餌を集めていたアリが

その間遊びほうけていたキリギリスが冬になって飢えるのを見て哀れむみたいなやつ。

勤勉を讃えるような話なんだと思うんですけど。

でもあれ、アリとキリギリスの対比って、

そもそもアリの方が食物連鎖の上位にいる気がするんですけど。どうなんでしょうか。

なんかその時点で土俵が違うっていうか、

なんとなればあいつらキリギリス食うじゃないですか。

その気になれば食うも辞さないじゃないですか。

なにしろ森でアリが飢えるのが一番怖い。あいつら何するか分からない。

ちょっとした小動物なら平気でバラしにかかるし、

しかも自分の命をかえりみず、一匹の女王に殉じることができる

日本兵みたいなたちの悪さがある。

いいか、森で奴らに出会ったら絶対に戦うな。奴らは本物のクレイジーだ。

って軍曹が言うやつじゃないですか。

だいたい夏の間アリが集めていた餌にだって

キリギリスの仲間がいるかもしれない。捕食者はアリの方ですから。

それでもキリギリスはバイオリンを弾いて、陽気に振る舞います。

冬に飢えることを気にしないのは

彼が冬まで生きられる保証が無いからで、

ならば今を大事に生きようじゃないかと。

声を張り上げて歌うわけです。

森の隅々まで響き渡るように。

過酷な現実を誰もがいっとき忘れることができる。そんな歌を。

わあ。泣けるわー。

無職の星だわー。

それに引き換えアリのなんと無個性なことか。

頑張れキリギリス。

君は働いたら負けだ。