ことなかれ

あたりさわりのない日々の記録

せるまわし

バイクにね。全然乗れてなくて。

寒さがすごいもんだから。

この時期のバイクの寒さといったら尋常ならざるものがありましてですね。

アクセル開けたまま意識失うくらいの勢いある。

それはもう暴力の域で。

そんなんで、まあ一ヶ月くらい乗れてなかったから

久々にエンジンくらいかけてやろうと思って、

キーを突っ込んで勢い良くセルをまわしたところ、

「え?」

って言われました。バイクに。

いや、え?じゃねえよ。

つってもう一回長めにセルスイッチを押してみたんですけど

「んん〜〜〜〜ぅ〜〜ええ?」

つって。変な疑問形しか返ってきません。

やべえ、しばらく放っておいたらひどく聞き分けの悪い子になってしまった。

夏はあんなに元気だったのに。

野山を駆け回ってたのに。勝手に。

それがここへきてなに、圧倒的寝覚めの悪さ。

ややもするとそのまま鉄の塊に戻ろうとするので、

こらこら、しっかりしなさいと、喝を入れる意味で何度もセルを回していたら、

「グッ…ゴフッ」と咳き込んだ後、ぴたっと心を閉ざされました。

完全なる沈黙。

あ、だめだこれ。

もはや自力で目覚めることかなわぬ様子。

そこまで深い闇を抱えていたとは・・・。

うーん。こうなったらもう押しがけしかない。

押しがけ。

バイクを押して走り、

スピードが乗ったところで一気にクラッチを繋いで飛び乗るという、

男の中の男だけに許された最強に男らしいエンジンのかけ方。

ついに僕も男を見せる時が来たか。

今、奴を目覚めさせるには僕の男気しかない。

上等だ!やってやんよ!と、マンションの前までバイクを移動させ、

せいや!せいや!つって全力で押して、走って、

5分後にJAF呼びました。

無理。ハーレー押しがけできるのは首に鎖とか巻いてるような、

火のついたドラム缶がごろごろ転がっている地域に住む人達だけだと思う。

だいたい重すぎる。

3速全開で押しても象亀にコーナーで追い込まれる速度。全然駄目。

まあ、そんなこんなでやって来たJAFの人は、ブースターケーブルを繋ぎ、

瞬殺でエンジンをかけてから颯爽と帰って行きました。

あんなにかたくなに完黙を貫いていていたはずのうちの子が、あっさり心を開いて。

こ、これが・・・男か。

うむ。あの男、ぜひ養子に欲しい。

養子にして家業(公園で砂鉄を集める仕事)を継がせたい。

その男曰く、バッテリーが弱くなっているので

今日はある程度走ってくださいね。とのこと。

なるほど、貴殿が言うのならと、

気軽にちょっと近所を流してきたんですけど。

いや、だから寒さが暴力の域だっつってんだろ。

皮膚という皮膚から血が出るかと思ったし、鼻とか取れたんじゃないかと思う。

駄目だ。

とにかく今月中に自分もバイクもメンテナンスに出そう。