ことなかれ

あたりさわりのない日々の記録

棲みか

来てますね。

アレが。春が。

いつの間にやら来てますよ。

よく春の足音が聞こえるなんてことをニュースで言ったりしますけど、

あの、全然聞こえませんから。

完全に忍び寄って来ますからあいつら。

いつも通りの冬の町を歩いていて、

ふと振り返ったら梅が咲いていたりする。

いや、ほんと、絶対振り返る前は咲いてなかった。なのに今見てこれ。満開これ。

春の奴が気配を消して背後に立っていたとしか思えない。

およそ見えないところで季節は進みます。

やれやれ。

当方まだ春を迎え入れる体制できていませんけど?

少しはこっちの都合も考えて欲しいものです。

そう、それであのー、ちょっと暖かくなってきたんでバイクにでも乗ろうかと思って、

こう久々にバイクにかぶせてある銀色のシートをばさっと外してみたんですけど、

なんか、中からいっぱい猫が飛び出して来ました。

ギニャー!つって。

僕も負けじとうわー!つって。

ギニャー!うわー!つって。

どうも猫の方達は冬の間僕のバイクのシートの中で暮らしていたみたいなんですね。

座席の上とかもう、なんかある種の巣っていうか、

ここで先ほどまで営んでいらっしゃった感じの

完全なるくつろぎ空間に変貌しておりまして、

まあぶっちゃけ毛がすごい。生え代わった冬毛やら、

吐き出した毛玉やらが渾然一体に。

カオス。カオスがここに。うっかり僕のバイクの上に。誰かー。

うろたえる僕と同じような顔をした猫と瞬間目が合いました。

ああ、ごめんよ。くつろぎの時間を邪魔して。

でもさ、これ僕のだから。

そんな非難がましい目で見てもダメだから。

確かに暖かいかも知れないよ。なんか座席の上ふかふかしてるしね。

でもこれ違うから。小屋じゃないから。

けっこう走るやつだから。

君たちの大嫌いな音を出して走るやつだから。悪いけど。

つって、風を切って走り出す前に

しょぼしょぼバイクの掃除をする事になりました。

乗りだした当初は近所の猫たちを震え上がらせた僕のマッシヴモンスターも

今やうかつな猫たちの愛の巣に。

けしかるかけしからないかで言ったらけしからぬ話だけれども、

まあちょっと地元に受け入れられたようで嬉しくもある。

そんな初春のひとときでございました。

今年の夏もちびっ子猫たちが近所を走り回る事になるのだろうな。

ん。もうちょっとここにいてみようか。